防火地域・準防火地域とは?新潟で建てるポイントを設計士が解説
2023.10.27
新築住宅を検討するとき、デザインや間取りだけでなく耐震や耐火といった安全面も気になるのではないでしょうか。木造で建てることが多い一般住宅では、火災についても考えておかなければなりません。
そこで本記事では、火災に強いとされる「省令準耐火構造」について解説します。
「省令準耐火構造」とは、建築基準法が定める「準耐火構造」に準拠した防火構造を持つ住宅のことです。具体的な基準は独立行政法人住宅金融支援機構が定めており、以下の4つの構造に合致することが求められています。
「燃え広がりにくく火災に強い家」を目指したもので、ハウスメーカーなどは標準としていますが、工務店は標準化していないところも多い仕様です。
ここからは、省令準耐火構造のメリットとデメリットを見ていきましょう。メリットとしては、おもに次のふたつが考えられます。
順番に見ていきましょう。
省令準耐火構造のメリットとしては、「隣家などから火が燃え移りにくい(類焼防止)」や「火災が発生しても通常より燃え広がりにくい(延焼防止)」という特徴を持つところでしょう。「各室防火」という考えが取り入れられており、火災が発生した部屋から、それ以上火が燃え広がらないように設計されています。
一般の木造住宅よりも耐火性能が高い設計のため、逃げる時間や消防が到着する時間を確保し、初期消火で済む可能性が高まります。
火災保険や地震保険が安くなるという点もメリットです。火災・地震保険ともに、「耐火構造か?」「非耐火構造か?」といった区分が設定されています。省令準耐火構造は「耐火構造」に区分されるため、保険料を軽減することが可能です。
火災保険シミュレーションサイトなどで試算するときも「耐火構造」を選択する項目が用意されています。気になる人は「耐火構造」と「非耐火構造」で比較してみても良いでしょう。
次はデメリットについて見ていきます。省令準耐火構造のデメリットは、次のふたつです。
順番に解説します。
一方デメリットは、定められた耐火構造基準をクリアするための建築コスト増です。
省令準耐火構造に適合させるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。設備費や建材なども通常より割高なものを使うケースや人件費なども高く付いてしまうかもしれません。
一般的な目安としては、「坪1万円程度のコスト増」とされています。この金額は、メリットでお伝えした「保険料の値引き」と比較してもあまりお得感が感じられない規模です。
省令準耐火構造には「素材」についての基準も定められています。そのため、人によっては希望したデザインを叶えられないケースもあるでしょう。
「火災に強い家」にするためには類焼防止や延焼防止といった機能が必要です。燃えやすい場所には不燃材を使用したり、ドアや窓のサイズ、内装等も制限があります。梁を見せたり、カウンターキッチンにしたりといったデザインは難しいです。
延焼防止という観点から見ると、「全館空調」との相性もあまり良くありません。全館空調はダクトなどで家全体をつなぎ、冷気や暖気をまんべんなく行き渡らせるシステムです。火災発生時は火のめぐりを早めてしまう可能性があります。
今回は「省令準耐火構造」について紹介しました。大切なのは火災に強いというメリットと建築コストやデザインの制限といったデメリットをしっかりと比較・検討することです。
とくに本記事で紹介したふたつのデメリットは、注文住宅を考えている施主にとっては大きなネックとなります。木造住宅は火災に弱いというイメージだけで、省令準耐火構造を採用するのはあまりおすすめしません。
とくに火災と地震に関しては、国が定めた建築基準法の時点で高めに設定されているため、断熱性や気密性といった「暮らしやすさ」に関わる住宅性能に予算を使うことも検討してみてください。
命に関わる安全性はもちろん重要ですが、やりすぎても仕方ありません。コストや希望に合った家づくりを選択して欲しいと考えます。
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