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住宅性能基準「新潟県版雪国型ZEH」とは? 全国各地の事例も紹介

住宅性能基準「新潟県版雪国型ZEH」とは? 全国各地の事例も紹介
2023.02.28

「冬は暖かく、夏は涼しい」といった高性能住宅が国内でも注目を集めています。断熱性や気密性を高めつつ、採光や空調計画をしっかりと計算することで、より少ないエネルギーで、1年中快適な室内空間を維持できるよう設計された住宅です。Mockhouseでも、これまで高性能住宅のさまざまな規格や、そこに関連してる気密性・断熱性といった住宅性能について解説してきました。

本記事では、新潟県も推進している独自規格「新潟県版雪国型ZEH」を紹介します。降水量や降雪量が多く、寒い地域である新潟県に必要な住宅性能とはいったいどのようなものなのでしょうか。ぜひ、最後まで読んでみてください。

この記事を書いたひと
小林紘大
小林紘大

新潟市内の工務店で家づくりの実務経験を積んだ後にコウダイ企画室。としてフリーランス建築士として活動中。
「楽しい暮らしは自分でつくる」をモットーに新潟の家づくりを楽しく応援していています。

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地域にアジャストさせた高性能住宅「新潟県版雪国型ZEH」とは

「新潟県版雪国型ZEH」の前に、もととなる高性能住宅規格・ZEHを少し振り返っていきましょう。

ZEHとは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」のを略したワードで、壁や床下、屋根、窓、空調といった住宅のさまざまな設備の省エネ性能を高めつつ、太陽光発電システムや蓄電池なども活用し、家庭で使うエネルギーの消費量の実質ゼロ、またはプラスになることを目指した住宅のことです。

気になるZEHとは?新潟には不向き?ZEH住宅のメリット・デメリットや光熱費が黒字になるヒミツも|マガジンを読む|モックハウス
家づくりについて調べているとよく耳にする「ZEH」や「ZEH住宅」という単語。 TVCMや広告などで見かけ、気になっていた人もいるのではないでしょうか。 しかし、ZEH住宅の特徴や詳細などまで詳しく知っているという人は少ないかもしれません…

この基本となるZEHに、新潟県の気候に合わせ、さらに高い断熱性や気密性といった独自基準を定めたものが「新潟県版雪国型ZEH」です。

世界が求める住宅の基準や目標とローカル基準とのギャップ

2021年に開催された、COP26(国連気候変動枠組み条約締約国会議)では、大気中の温室効果ガス濃度を安定させるためのさまざまな取り決めや確認が参加国の間で行われました。そのうち、日本の住宅部門はマイナス66%の削減が求められています。

しかしながら国内であっても、北海道から沖縄まで、さまざまな気候条件があるため、一律で定めるわけにはいきません。そこで、国と各自治体が連携し、その地域に合った住宅基準の研究が進んでいます。新潟県版雪国型ZEHもそのひとつです。

新潟市が目指す脱炭素社会のキーワード「田園型環境都市にいがた」

雪国型ZEHとは、新潟市が目指す街づくり計画「田園型環境都市にいがた」にも含まれています。

新潟市環境部環境政策課ゼロカーボンシティ推進室によると、新潟市は、市街地のすぐそばに田園が広がる恵まれた条件を備えた街であり、日常生活や文化、食、エネルギーなど、自然環境と都市の両方の価値を享受できます。そんな魅力的な環境を維持し、双方の利点を活かしていく理想の都市像を叶えるための都市計画が、「田園型環境都市にいがた」です。

具体的には、環境保全型農業の推進、豊富な農業系バイオマスの利用、ニューフードバレー(農業の生産拡大、食品加工・商品開発支援、販路拡大を一体的に捉え、シームレスに繋げていこうという新潟県の構想)形成、都市と農村の交流促進、自然豊かな地域における生物多様性の保全といった項目が含まれています。

そのなかで、私たちが暮らす住宅部門が与える影響は大きく、より高性能で環境に優しい家づくりが求められていることも、独自基準のZEHが発案された背景にあります。

独自基準参考例4つ

ここからは、全国各地が設けている独自基準の参考事例を見ていきましょう。今回紹介するのは、以下の4つです。

  • 鳥取 NEST
  • 長野 信州健康ゼロエネ住宅設計
  • 糸魚川 ISSH
  • 新潟県 雪国型ZEH

鳥取県:とっとり健康省エネ住宅「NE-ST」

鳥取県は、県民の健康の維持・増進、環境に配慮した省エネ化の推進、CO2削減を目標に、戸建住宅を新築するときに県独自の省エネ住宅基準(とっとり健康省エネ住宅性能基準)「NE-ST」を策定しました。グレードを示す「T-G」は1〜3まであり、最低限レベルの「T-G1」でも政府が推進しているZEH基準を上回っています。断熱性能を示す「Ua値」や、気密性能を示す「C値」はもちろん、「内部結露判定(構造体の腐食やカビ防止を目的とした判定)」にまで言及されており、すでに2020年7月からNE-STの認定が開始済みです。

興味深いのは、鳥取県内でNE-STを普及させるために、県や事業者が実施した施策です。はじめは県が事業者向けにNE-ST認定基準の研修を行いました。これは、鳥取県内のほとんどの住宅会社・事業者が参加するほど、大きな規模だったと聞いています。

その甲斐もあってか、すでにブランディングにも成果が現れはじめ、消費者たちのほうから「NE-ST基準で建てたい!」と選ばれるようにまでなっているようです。

参考元:https://www.pref.tottori.lg.jp/293782.htm

長野県:信州健康ゼロエネ住宅指針

長野県も県独自のゼロカーボン戦略を打ち出し、住宅部門では「信州の恵まれた自然環境と森林資源を活かし、資源や経済などの地域内循環を考慮した2050年ゼロカーボンに資する質の高い快適で健康的な木造住宅」として「信州健康ゼロエネ住宅指針」という基準を策定しています。

消費者向けには、YouTubeでも閲覧可能な解説動画を作成し、積極的な情報発信と理解を求めると同時に、事業者向けには基本項目や設計や施工、維持管理、解体・再利用までの各段階における基本方針、二酸化炭素の排出抑制の取組など整備方針、といった細かな基準が設けられています。

なかには「景観」や「周辺環境との調和」といった項目もあり、こちらもかなりの本気度が伝わる内容となっています。

参考元:https://www.pref.nagano.lg.jp/kenchiku/kenkozeroene/shishin.html

新潟県糸魚川市:糸魚川住宅認定基準「ISSH」

新潟県糸魚川市は、市独自の住宅認定基準「ISSH(Itoigawa Sustainable Standard House)」を策定しました。「これからの家づくりのスタンダードを糸魚川から」をスローガンに、雪国・糸魚川の暮らしに合った高性能住宅の基準が盛り込まれています。高断熱・高気密に加え、糸魚川産の木材を利用し、地材地建を推進します。

例えば、断熱性能を示す「Ua値」は、標準基準でもHEAT20のG1相当、最大でG3グレードまで求められています。糸魚川産の木材は施工面積1平方メートルあたり、0.03平方メートル以上の使用といった具合です。構造計算の実施や気密性に関する基準もあります。

糸魚川の森林資源で地域経済循環をつくる。緑でつなぐ未来創造会議/3M
「緑でつなぐ未来創造会議/Midori Mirai Meeting Itoigawa(通称:3M(さんえむ))」は、地元の豊富な森林資源の活用を通じて地域経済が循環する仕組みづくりを目指しています。

新潟県:新潟県版雪国型ZEH

冒頭でも紹介した、新潟県の独自基準「新潟県版雪国型ZEH」です。新潟県内全域に向けた住宅性能基準のためか、細かなラベルはありませんが、基本的な3つのポイントを定めています。ひとつ目は、「断熱性能はHEAT20のG1以上」、「気密性能はC値1.0以上」「太陽光発電は(可能な場合は)導入する」です。

こちらは、まだできたばかりの構想で、これから事業者や消費者に向け、普及がはじまっていくのではないかと見られているものです。

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それぞれの地域に合ったベストな選択ができる世の中に

今回は、新潟県の住宅基準・雪国型ZEHと、全国各地の事例について紹介しました。すこし難しい内容だったかもしれませんが、ポイントは国内でも各地で住宅性能の新しいローカル化が進んでいるという点と、新潟県内のおもな動きについてです。

CO2排出量削減に向けた世界の取り組みはすでにはじまっており、日本も賛同していますが、住宅基準は最低ラインのまま、残りは各自治体に任せるという方針がとられています。家づくりにおいても、それぞれの地域に合ったベストな選択ができる世の中になるように、これからも注目していきたい分野ですね。

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